入学してすぐに仲がよくなった沙希は、あまり学校での評判はよくない。髪も茶髪だし化粧もしていて言葉も荒い。
二年生になり学校を休みがちになったのは、クラスで浮いていたことも原因のひとつだと思う。
悪い仲間とつき合っているという噂もたまに耳にしていた。
だけど私は沙希のことが好きだったし、彼女も私に心を許してくれている自信があった。

あれは入学してすぐのころのこと。
三年生の男子のひとりからしつこく声をかけられ泣きそうになっている私を、沙希が助けてくれたのだ。

『あたしの友達になにしてんの?』

背の高い男子たちに挑むように言った彼女の横顔は今でも覚えている。
強くてまっすぐな視線、恐れを微塵にも出さない沙希は、私の手を取って教室まで連れて来てくれたのだ。

ようやく教室の前で沙希はくるりと振りかえり、

『あたし、稲垣沙希。同じクラスだよね』

と照れくさそうに笑った。

さっきの怒った表情とは全然違うやわらかい笑みに、変な話だけれど私は恋をした気分になった。