「有川、ちょっと聞いていいか?」

空を見やった柊先生に「はい」と答えた。

「裏BBSって見ているのか?」

「え、先生も知ってるの?」

「久保田が自慢げに話してたぞ」

久保田のおしゃべりめ。
いない相手に心のなかで文句を言いながらうなずいた。

「柊先生も見ているの?」

私の質問に答えはない。
見ると、ぼんやりと遠くを見つめている横顔。

「先生?」

「あぁ……。いや、まぁいいんだ」

「なにがですか?」

尋ねる私をようやく見た柊先生の瞳に、悲しみが揺れている気がした。

が、すぐに視線は逸らされてしまう。青信号に促されるように、私たちはまた歩き出す。

「事件は続いているのか?」

「わからない。でもこれで終わるといいな、って思ってる」

「そうだな。あまり危険なことに関わるなよ」

そう言うと柊先生は「じゃあ」と告げて足早に歩いて行ってしまった。