「充分気をつけるよう、ドア越しに伝えたが、警察と関わりたくない事情がある様子だった」

「えっと……それだけ? 強引にでも保護しないと危ないよ」

「ちゃんと見張りを置いてきたから安心しろ」

「でかした」

冗談めかせて言うと、鈴木刑事は笑い声をあげたから驚いた。
同じように感じたのか、取り繕うように咳払いをする鈴木刑事。

「しかし、な……。まだ気になることがあるんだよ」

「というと?」

「まあいい。状況報告をしないとお前、勝手に動きそうだからな。こっちはこっちで捜査を続けるから、探偵ごっこなんてやめて大人しくしてろ」

そう言うとあっけなく通話は切れてしまった。

「言いたいことだけ言って!」

スマホを置いて横になる。
六十四歳の藤本昌代と、四十歳の今田昌代。
どちらかが本物だとして、これからなにが起きるのだろう。モヤモヤとした感触がずっとお腹のなかにある。
なんだかヘンな胸騒ぎがした。