「俺、思うんだけど」

それまで黙ってレモンスカッシュを飲んでいた和宏が、鈴木刑事に顔を向けた。

「犯人だって、裏BBSの存在が警察に気づかれているって思うんですよ。現に、警察は藤本昌代を保護しなくとも見張っている。だったら予告なんてしないで殺せばいいと思いませんか?」

リスクを犯してまで予告をする意味はなんなのだろう……。
鈴木刑事は軽くうなずくと水をガブッと飲み干した。

「アピールしたいんだよ」

「アピールって……なんのために?」

私は尋ねた。
「例えば〈愉快犯〉という言葉がある。ゲームみたいに殺人をする人だ。他にも警察に恨みをもつ犯人ってこともありえる。警察が翻弄されるのが楽しくてやっているんだろうな」

「殺人をゲーム感覚でやられたらかなわんなぁ」

嘆くように言った久保田の口の周りにもクリームがへばりついていた。

「アプリの閉鎖はしないんですか?」

和宏が疑問を口にすると、鈴木刑事は頭を掻いた。

「多分近々そうなるだろう。が、もう少しで作成者がわかりそうなんだ。作ったと思われる外国の企業を特定することができたんだ」

「どういうこと?」

意味のわからない私に、結菜がハッと顔をあげた。

「私、ドラマで観たことあります。外国で作ったアプリは誰が作ったのかがわかりにくい、って」