店内では気の早いクリスマスの音楽がずっと流れている。
陽気な音楽が耳障りでさっきから落ち着かない。

「藤本昌代って誰なんやろ」

どでかいフルーツパフェをほおばりながら久保田が言った。

「今調べてもらってるところだ。そのうち連絡入るだろう」

そう言ったのは、同じパフェと格闘している鈴木刑事。どうやら和宏が警察署に電話をかけて呼び出したらしい。
他のメンバーは安定のドリンクバー。
ウーロン茶を飲みながら、私はみんなを見回した。

「なんかおかしくない?」

「なにが?」
代表で答えた和宏を見て私はスマホのカレンダーを見せる。

「裏BBSを見つけてから一週間以上経ってるんだよ。犯行予告をしてから日数が経ちすぎてない?」

「機会を狙っているんだろうよ」

生クリームをほおばりながら鈴木刑事は言った。

「機会って、犯行の?」

「うかつに動いたらどうなるかくらい、頭のいい犯人ならわかりそうなもんだろ。それより、お前たちは動いてないだろうな。犯人から目をつけられているんだから、もう推理ごっこはやめとけよ。俺はそのことを今日は忠告しに来たんだ」

上唇をクリームで白くして言うものだから、どんな顔をしていいのかわからずに困る。

「たしかにあれは驚いたよな。まさか自分の名前が出てるなんてさ」

和宏が私を見てくるので反射的にうなずいた。結菜の前だからということだけじゃなく、どこか他人事のように感じている私がいた。
大輔のマンションの帰り道、ひょっとしたら殺されていたかもしれないと思えば怖さはある。夜道に響く足音を思い返せば、たしかにあれがリアルだったとも思う。
でも、どこか遠い世界での話に感じるのはなぜだろう?