結菜は軽くうなずくと、窓の外に目をやった。

「私も同じ。普通じゃないことばっかり起きてるから、頭がショートしたみたいになってるんだ」

横顔の結菜が悲しそうに見え、また罪悪感がひしひしと沸きあがってくるのがわかった。
恋愛について話をするのは久しぶりだった。ここで曖昧にすれば、きっともうこの話題を結菜がすることはないだろう。
でも……このままウソばかりついていいの? そう尋ねる自分の声が聞こえる。
結菜から嫌われたくなくてごまかしてばかりいる。けれど、本当の気持ちを伝えるべきだと思った。
呼吸を何回か繰り返してから、私は背筋を伸ばした。

「結菜……話したいことがあるんだ」

顔を横に向けたまま、結菜はキュッと唇をかんだ。

「うん」

「前に結菜、私に言ったでしょう? 『もしも和宏のことが好きになったらちゃんと言ってほしい』って」

「うん……。芽衣は、本当はどう思っているの?」

「正直……わからないの。この数か月、たくさんの非日常なことが起きているよね? 一番近くで守ってくれる和宏に惹かれているのは実際のことだと思う」

結菜は軽くうなずくだけ。

「でもそれが〈恋〉かと聞かれたら、違うような気もする」

「どうして?」