そのとき、結菜がトイレから戻ったらしく私に気づき足を止めたのが見えた。久保田がさりげなく近づいて「夕方作戦会議」と言うと、結菜はすぐに手のひらを合わせた。

「ごめん。今日、用事あるの」

……ウソだとすぐにわかる。

その日は結局、結菜が私に話をしてくることはなかった。
私も謝ろうと決めたはずなのに、どうしても話しかけることができなかった。
あんな事件があったから、というのが言い訳だとはわかっている。

きっと結菜は私を避けている。
今朝のことが原因なのは明らかだろう……。

結菜は、私が和宏を好きになったのではないかと疑っている。
自分の気持ちを口にできないことが、ただもどかしかった。