家に着き玄関のドアを開けると、ちょうど二階から兄の直樹が降りてくるところだった。
私より九歳上の二十六歳。
すっかり社会人も板についていて、スーツも似合うようになった。
昔はケンカばっかりで苦手だったけれど、最近は穏やかで私のこともいろいろと心配してくれている。
その原因には心当たりがないわけではなかった。
大学を卒業してすぐに入った会社が相当のブラック企業だったらしく、一年も経たないうちに直樹は体調を壊し辞めることになった。
しばらく失業の期間があったけれど、その後無事に再就職をし、そのあたりから人が変わったようにやさしくなったと思う。
「おかえり。母さん今、出かけてったよ」
ワイシャツの袖をまくりながら言う直樹に、
「あ、今日は夜勤だっけ?」
と尋ねながら靴を脱いだ。
「朝メシのときにそう言ってただろ。まったく……全然聞いてないな」
苦笑した直樹が台所へ向かうのであとを追った。
今のやさしい直樹が私は大好きだ。
私より九歳上の二十六歳。
すっかり社会人も板についていて、スーツも似合うようになった。
昔はケンカばっかりで苦手だったけれど、最近は穏やかで私のこともいろいろと心配してくれている。
その原因には心当たりがないわけではなかった。
大学を卒業してすぐに入った会社が相当のブラック企業だったらしく、一年も経たないうちに直樹は体調を壊し辞めることになった。
しばらく失業の期間があったけれど、その後無事に再就職をし、そのあたりから人が変わったようにやさしくなったと思う。
「おかえり。母さん今、出かけてったよ」
ワイシャツの袖をまくりながら言う直樹に、
「あ、今日は夜勤だっけ?」
と尋ねながら靴を脱いだ。
「朝メシのときにそう言ってただろ。まったく……全然聞いてないな」
苦笑した直樹が台所へ向かうのであとを追った。
今のやさしい直樹が私は大好きだ。