「私たち、ちゃんと大輔さんに『危険です』って伝えたんだよ。それなのになんで犯人を招き入れちゃったんだろう」

あの時の大輔はたしかに酔っぱらってはいたけれど、まだ意識はしっかりしていたはず。犯人をみすみす家に入れるとは思えなかった。

「犯人が部屋の合鍵を持っていたということも考えられる」

「じゃあ、身内の犯行?」

「いや……井口の家族は北海道にいる」

首をひねった鈴木刑事が「あっ」と目を見開いた。

「顔見知りの犯行ならありえるな」

「顔見知り?」

鈴木刑事は自分の考えに興奮したようにうなずいている。

「だって有川が警告したにもかかわらず井口は犯人を部屋に入れている。顔見知りが尋ねてきたならありえる話だろ」

「……たしかに」

「井口は、ナイフで正面から心臓をひとつきされている。部屋が荒らされたり争った形跡もない、とすると顔見知りの犯行であれば納得できる」

パタンとノートパソコンを閉じる音に顔をあげれば、鈴木刑事は屈強な体をまっすぐにして立ちあがったので私も椅子を引いた。

「とにかく捜査をする」

「沙希と大輔さんの共通の知り合いを探すってことだよね」

そう言う私に鈴木刑事はハッと私を見た。

「お前かも」

「え?」

「いや……」モゴモゴと鈴木刑事が口の中で小さくつぶやく。

「なによ?」

「共通の知り合いといえば有川芽衣だよな、って……」

よほどものすごい形相で鈴木掲示を睨んだのだろう。マッハで彼は謝罪をした。