「あのね、私……夕べ、大輔さんに会ったんだよ」

「なんだって!」

人目もはばからずに叫んだ鈴木さんがグイと詰め寄ってくる。
通り過ぎる生徒がギョッとした顔をしていた。

「どういうことか説明してもらおうか」

「ちょ、顔が近いって」

迫力に気圧されながらも、私は昨晩の出来事をかいつまんで説明した。
目の前の顔色がどんどん青ざめていく。

「お前、またそんな勝手なことを……」

「だから電話したんでしょ」

「いいから署に来い。学校には俺から電話しておく。調書を取らないと」

走り去った鈴木刑事を唖然とした気持ちで見送る。
大輔が死んだ?
まさか、という気持ちが強すぎて頭が整理できない。

やがてパトカーがやって来たかと思うと、並行するように鈴木刑事が駆けてきた。
私の前で停まるパトカーに登校する生徒たちが一定の距離を取って立ち止まってざわめいている。
息を切らせながら鈴木刑事が後方のドアを開けた。

「さ、乗って」

「ちょっと待ってよ、これじゃあ私―ー」

「いいから乗れ!」

説明するひまもなく後部に無理やり押しこんでくる。私が乗りこんだのを確認して鈴木刑事も隣の席に座った。閉められるドア、走り出すパトカー……。

ようやく我に返ったときには、もう生徒たちの姿は見えなかった。
このあと教室で大盛りあがりするのは間違いない。