和宏のことを好きだと気づいてしまったことが、気持ちを重くしていることは明らかだ。どうしてこんなタイミングで、と否定する気持ちと同じ量で、会いたい気持ちばかり生まれている。
沙希のことだけを考えていたいのに、どうして?
自分がひどく冷たい人のように思えるよ。

「芽衣、おはよう」

突然声をかけられ、ビクッとしてしまう。
振り向くと結菜が両手でカバンを持って立っていた。

「あ、おはよう」

重い気持ちは目の前にいる結菜への罪悪感。結菜が彼のことを好きだと知っているのに、どうして私は……。

「もうすぐテストだね」

結菜の言葉に機械的にうなずいて横断歩道を渡る。
あと半月もすれば十二月だし、期末テストも迫ってきているのはたしかなこと。
だけど、そんなことは小さなことにしか思えない。

――結菜にだけは絶対にバレてはいけない。

心に強く言い聞かせた。この気持ちが一時の感情ならば、それが過ぎ去るのを平気な顔で待てばいいんだ。