そんなことを思っている間に、もう駅前の交差点までついてしまった。
柊先生とはここでお別れ。
私と和宏は同じ町内だけど、柊先生は電車で4つ先の町に住んでいるらしい。
帰宅前に、英会話レッスンを受けるなんてやっぱりかっこよすぎる。

「私もその英会話教室に通おうかな」

「残念だな。僕の通っているのは社会人クラスだから有川じゃ入会すらできない」

「ええ、ショックすぎる」

ぶすっと膨れる私に柊先生は和宏に視線を移した。

「さっきのアプリ、僕も帰ったら見てみるよ。これでもギリギリ猿田市民だし」

「投稿もできるそうですよ。くぼっさんが早速載せてるみたいだからチェックしてやってください」

「わかったよ。それじゃあ、また」

あっけなく去って行く背中を見送る。
あえて私に冷たくしているのか、それとも本当に興味がないのか……。

ふと見ると結菜はまだ夢のなかにいるように緩んだ顔をして和宏を見つめている。

「結菜もバスに乗るんでしょ」

「あ、うん」

我に返ったようにカバンをギュッと前で抱える結菜。

「またな。バイバイ」

にこやかに片手を挙げる和宏に何度もうなずいてから小走りで逃げるようにバス停へ駆けて行く結菜。
あの調子じゃ、いつか和宏にバレちゃいそうだな。