「なんだよ、ため息ばっか。芽衣らしくないな」

和宏が笑って顔をのぞきこんでくるので、ムッとする。

「だって怖かったし……」

「まあな。でも気にすることないよ。俺が守ってやるからさ」

こんなときなのに、また胸が痛くなる。うまく返事ができない私に和宏がニヒヒと笑い声をあげた。

「芽衣、なんだか女子みたいだぞ」

「なによ。私だって、一応女の子なんだからね」

「一応、な」

「あんたねぇー!」

パシーーン 
和宏の頭を叩く音が夜の街に響き渡った。
ゲラゲラ笑う和宏につられるように私も笑った。
だけど、私は知ってしまった。
私の胸にはもう、和宏が存在していることを。
結菜への懺悔の気持ちよりももっと強い想い。


私は、和宏のことが好きになってしまったのかもしれない。