「先生はそのアプリ、知ってますか?」

和宏は隣を見て尋ねるが、

「知らないな」

と先生も首をひねっている。

「動画サイトってこと? そんなのいっぱいあるじゃん」

話題に入りたくて前を歩く和宏に尋ねた。

「くぼっさんが言うには、猿田市の住民しかログインできないようになっているんだって。市民だけが見られるアプリっておもしろそうじゃね?」

日焼けした顔に白い歯で笑う和宏にうなずく。

「じゃあ帰ったらインストールしてみる。結菜も、ね?」

声をかけるがポーッと和宏に見とれていて聞こえていない様子。

「結菜」

和宏が前を向いたのを確認して声をかけると、ハッと我に返った様子で慌ててうなずく。

「だよね。うん、私も食べてみる」

全然話が頭に入っていないらしい。

ツッコミを入れたいところだけど、好きな人のそばにいられる幸せを邪魔しちゃいけない。

「食べる?」

いぶかしげな和宏に結菜は顔を真っ赤にしたまま、

「あ、そうじゃなくて。私、アプリとか疎くって……。今度、和宏くん教えてくれる?」

「別にいいよ」

内気な結菜なのに勢いでアプローチができていることに勝手に感動してしまう。

私もいつか柊先生とふたりきりで帰ることができたならいいな……。