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夕食は母とふたりだった。

兄は昨日から出張に出かけていて、夜勤明けで昼寝をしていた母に代わって私が準備をする。
といっても、スーパーの惣菜がメインになりがちだけど。
食べ終わると母はソファで横になりながらテレビを眺める。
食器を片づけたあと、雨戸を閉めるためにリビングの窓を開けた。

空には細い三日月が浮かんでいた。
頼りない線の月がなんだか切なくて、普段はじっくり見ることもないのにぼんやりと眺めていた。

「どうしたの? 庭にタヌキでもいる?」

半分寝ぼけた声で冗談を言う母は、もうすぐ眠気に負けてしまいそう。

「ううん。なんでもない」

雨戸を閉め、窓を閉じると自分の顔が映っていた。
重い気持ちは、想う気持ちのせい。
あんなに柊先生のことを追いかけていたのに、あの気持ちは月が欠けるように存在を薄めている。
代わりに満ちていくのは和宏への想い。
沙希が死んだというのにどうしてこんなことばっかり考えてしまうんだろう。

自己嫌悪に負けそうになりながらカーテンを閉めると、

「よいしょ」

と母が起きあがった。

「なんか甘いものでも飲もうか。ココアとかどう?」

良い提案のように言ってくるけれど、さっき夕食を食べたばかりだ。

「いい。太るし」

「女の子はもうちょっと太ったくらいがちょうどいいの。いいからつき合いなさい。久しぶりに女だけの夜なんだからさ」

勧められるままソファに座らせると、母はもういそいそと戸棚からお菓子を取り出している。