「トイレ行ってくる」
立ちあがった和宏にホッとしたのもつかの間、その手が私の頭に一回だけポンと置かれた。
え、と思う間もなくのけられた手。
見あげても和宏は教室のうしろに顔を向けたままだった。
「無理して強がるなよ。稲垣のことでつらいことがあったらちゃんと言えばいいから」
歩いていく和宏は、すぐにトイレから戻った久保田とじゃれあっている。
「あ、ありがと……」
私の言葉は聞こえなかっただろう。
……どうしよう。
ハッと気づくと結菜が私を見ていたので驚く。
頭に手を置かれたのを見られた?
そうだとしたら気まずすぎる。
でも、そんなことを考えること自体、また思考がおかしくなっているんだと気づく。
和宏はただ友達をなぐさめていただけ。
私が動揺したら、「自分の気持ち」を認めることになってしまう。そう、これは友情なんだから!
自分の気持ちがわからないから混乱しているのだ。
あたふたしてしまう私をじっと見つめる結菜は、やがて小さく息をついた。
立ちあがった和宏にホッとしたのもつかの間、その手が私の頭に一回だけポンと置かれた。
え、と思う間もなくのけられた手。
見あげても和宏は教室のうしろに顔を向けたままだった。
「無理して強がるなよ。稲垣のことでつらいことがあったらちゃんと言えばいいから」
歩いていく和宏は、すぐにトイレから戻った久保田とじゃれあっている。
「あ、ありがと……」
私の言葉は聞こえなかっただろう。
……どうしよう。
ハッと気づくと結菜が私を見ていたので驚く。
頭に手を置かれたのを見られた?
そうだとしたら気まずすぎる。
でも、そんなことを考えること自体、また思考がおかしくなっているんだと気づく。
和宏はただ友達をなぐさめていただけ。
私が動揺したら、「自分の気持ち」を認めることになってしまう。そう、これは友情なんだから!
自分の気持ちがわからないから混乱しているのだ。
あたふたしてしまう私をじっと見つめる結菜は、やがて小さく息をついた。



