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シャープペンシルを持つ手に力をこめて背筋を伸ばす。

そう、私は柊先生が好き。

想い続けていればいつか柊先生は振り向いてくれる。
それなのに……どうして和宏が気になるの?
プリントに『ちがう』と書いてみる。
気になっているんじゃない。
大事な友達が亡くなったショックで、きっと思考回路が不安定になっているだけ。
沙希がいなくなって、まだ一カ月だもん。
恋愛のことを考えるより、今は沙希の死の真相を調べなくちゃいけない。今の感情は幻なんだから。
気持ちを引き締めているうちに授業は終わってしまった。

休憩時間になってもどこか落ち着かない気持ちのまま、次の授業で使う教科書を探していると、

「なあ」

和宏が足をこっちに投げ出していた。

「なによ」

「お前大丈夫か?」

「なにが?」

と口にしてから、こういう尖った言葉での会話をしてしまう自分を反省。
笑みをあとづけで浮かべると、和宏は軽く首をひねった。

「スマホ落ちてるぞ」

指さされて見ると足元にスマホが転がっていた。いつの間に?

「え、なんで?」

「やっぱなんかおかしいぞ。授業中もぼーっとしてたし」

ひょいと手を伸ばしてスマホを渡してくれる和宏。

「ぼーっとなんかしてないし。柊先生に見とれていただけだもん。本当、先生かっこいいわ」

軽く笑って教科書を意味もなくパラパラとめくってごまかす。