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五時間目は英語の授業だった。
周りが「愛しの柊先生がくるよ」と言ってくるのでヘラヘラ笑ってみせるけれど、最近の私はなんだかおかしい。
今日も紺色のスーツに身を包んだ柊先生が登壇した。

が、柊先生はなぜか数枚のプリントをみんなに配った。

「悪いけど、ちょっと具合が悪くてね……。プリント自習してほしいんだ」

たしかに柊先生の顔色は悪く見えた。

「質問のある人は挙手して。じゃあ、よろしく」

椅子に腰をおろした柊先生と目が合った。
一秒も見つめ合っていなかったと思うけれど、先に視線を落としたのは私のほうだった。
チラッと横を見ると、和宏と目が合った。
一瞬、潤んだように見えた和宏の瞳にハッとしたけれど、次の瞬間には眠そうな目に戻っていた。

「寝てないし」

肩をすくめてみせる和宏に、

「誰もそんなこと言ってないでしょ」

高鳴る胸を隠しヒソヒソ声で答えた。自然に言えた、と思う。
視線を前に戻せば、頬のあたりが火照ってるのがわかる。

「違う……」

小さくつぶやくと、前の席の結菜が「え?」と振り向いたので「なんでもない」と首を振ってごまかした。