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左の廊下を進む鈴木刑事について行くと、奥まった小さな部屋に通される。机とパイプ椅子があるだけで、窓すらない部屋だった。

「これって、取調室?」

黄ばんだ壁紙を見ながら椅子に座ると、ギイと大きな音を立てた。

「いや、応接室だよ」

くだけた口調の鈴木刑事が鼻をかきながら椅子に座る。

「で、どんな情報なんだよ。さっさと言えよ」

「ダメダメ。情報の交換は、そっちが先。別にここが取調室でも怖くないもん。無理やり聞き出そうとしたら、大声で騒いでやるんだからね」

「……ったく」

口をギュッと閉じる私に、不満げな声を漏らした鈴木刑事。見ればその顔はなぜか笑っていた。

「有川は本当におかしなヤツだな。今どきの女子高生はみんなそんな感じなのか?」

「どうだろう。標準じゃない?」

「しょうがない、俺から話そう。ただし、ここで話をした内容は誰にも言うなよ」

急に素直になる鈴木刑事に戸惑いながらもうなずく。おかしなヤツ、というのは褒め言葉だと好意的に受け取ることにした。

「だいたいの内容はニュースで知ってるんだろうから、報道されてないことだけ言をうから」

鈴木刑事はその大きな右手で皮張りの手帳を操ると、沙希が殺された日の概要をボソボソと話し出した。