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「お前、なにを知っているんだ?」

グイと顔を近づけてくるので思わずのけぞってしまう。

「顔が近いしタバコくさいんだけど」

嫌そうな顔を浮かべるとようやく鈴木刑事は顔を離してくれた。

「それにさっきから言ってるじゃん。これは情報交換の提案だって」

「お前は警察をバカにしているのか?」

「私は〝お前″という名前じゃありません。有川芽衣です」

「そんなの知ってる」

ふう、とわざとらしくため息をついて壁の時計を見た。

「どうする? 暗くなってきたし、早く帰りたいんですけど」

憎々し気な顔が私をにらんでいる。刑事って怖い人だけがなれる職業なのかも。
女優さながら演じているけれど、心臓の鼓動がいつもより速いことは自分でもわかった。
それでも……負けない。沙希のために必ず犯人を見つけるんだから。

しばらく黙っていた鈴木刑事が、ふっと体の硬直を解くのがわかった。
ゆらりと立ちあがると、

「ついてこい」

と歩き出した。