「でもそれは芽衣の証言だけだろ? 芽衣がウソを言っている可能性だって警察は考えるだろうし」

「私、ウソついてないもん」

憤慨する私に、和宏は肩をすくめた。

「俺はお前を信じてる。ただその可能性がある、って言ってるんだ。稲垣があの夜怯えていたことを証明できる証拠はないんだし、しばらくは様子を見たほうがいいと思う」

和宏の推理を否定したのは久保田だった。

「いや、警察が調べればログからわかるで」

「ログ?」

私と和宏がハモって尋ねると、久保田は目をまんまるにしてから得意げにあごをつき出した。

「まぁ、履歴みたいなもんやわ。執行人ってやつがこの記事をいつ書きこんだかは警察がその気になれば調べられる、っていう意味や」

なるほど。そういうのができるなら警察に知らせたほうがいいかも。
和宏も納得したように黙ったのを見て私は言う。

「じゃ、やっぱり警察に行ってみるよ。早く犯人みつけてほしいしね」

沙希を殺した犯人を見つけることが私に与えられた使命だとさえ感じている。
それは別の呼びかたをするならば、罪悪感だと思った。