廊下を駆けると、校舎の静けさを割るように、足音が騒がしく響いている。

聴こえていた部活の声も消え、校舎はまるで沈みかけた夕陽が作る影のなかで息を潜めているみたい。


階段をおりながら、首筋にひんやりとした空気を感じる。

九月も下旬となったこのごろでも、私立であるこの高校ではまだクーラーが効いている。

十月になれば冬服になるけれど、この時間になるとさすがに肌寒く感じる。
まあ外に出れば、まだ昼間の暑さが残っているんだろうけれど。

一階にあるげた箱に到着するとその向こうにある職員室をチェックした。

――時間的にはピッタリのはず。

肩までの髪を手鏡で整える。
大きく深呼吸をしていると、職員室のドアが開くのが見えた。


「お先に失礼します」

という低音の声に続き、帰り支度をした柊(ひいらぎ)先生が出てきたのだ。

良かった、間に合った。

「柊センセ~」