「そっか……。そうだよね、ありがとう。芽衣にはいつも励まされてばっかりだね。あ、でも……私が和宏くんのことが気になっているわけじゃないからね。ただ友達として――」

「わかってるって」


恋をしている人は、相手の一挙一動に振り回されている。
瞬時に幸せになったり悲しくなったりするもの。
結菜も同じで、話題も考えも視線もすべてが、和宏中心になってしまっている。

恋を知らなかった私は、そんな結菜の気持ちがずっとわからないままだった。
だけど今は違う。この数か月、結菜の悩みをリアルに感じてしまっているんだ。

「そろそろ時間じゃない?」

壁にかかった時計を見て言う結菜に私はハッとする。いつの間にかこんな時間!
慌ててカバンに荷物を詰めこんで立ちあがると、

「じゃあ、先行くね。バイバイ」

手を振るのもそこそこに教室を飛び出した。