なんでだろう、最近の私は少しおかしい。
沙希の事件が起きてから和宏がやたら私を心配してくれているせいだと思う。

テレビ局は私が沙希の親友だという情報をつかんでからは、執拗にインタビューを試みてくる。
それを毎回助けてくれたのは、和宏だ。
夜になるとたわいないメールをくれたりもしていた。

意識しているのかな……。

そう思えば、結菜への罪悪感がぶわっと心に生まれて、必死でこの変な感情を否定することのくり返し。

「なあ、なんか元気ないな」

今も私の顔を至近距離でのぞきこんでいる和宏の目を見ることができずに、私はあさってのほうを見てやり過ごす。

「そ、そんなことないよ。ただ、今日は寒いなって」

「は? 今日はあったかいほうだろ。熱でもあるんじゃないのか?」

そう言うやいなや、和宏は大きな手のひらを私の額に当てたからびっくりする。
ひんやりとした手に逆に動けなく体。
固まる私からすぐに手を離すと、和宏は眉をひそめた。

「お前、マジで熱あるぞ」

「え?」

赤らんでいるだろう顔を見せないように地面を見ながら尋ねると、和宏は突然私の手を引いて歩き出した。

「ちょっと!」

「保健室行こう。熱、測ったほうがいいって」

和宏はもう保健室に連れて行くと決めたようで、ずんずん進んでいく。
和宏を中心に、流れる周りの景色。
なんだか、少しだけうれしく思ってしまう自分が止められない。
彼の肩幅は思ったよりも広く、やわらかい髪が風に揺れていた。
私は……和宏を好きになっているんだ。
持ってはいけない感情が姿を現し、私を飲みこんでいく。

そんな気がしていた。