約束の日、学校の校門に集合した俺ら4人は北野ドリームランドまで片道1時間かけて自転車で向かった。
途中でコンビニの前で缶ジュースを買って休憩したり、深夜までやってるゲームセンターに立ち寄ったり、気が乗らない割に結構楽しめた。
だから、俺は嫌な予感がしていたことなんてついた時にはすっかり忘れていた。
北野ドリームランドに近づくとだんだんと街灯が減っていき、辺りはシンとして虫の声だけが妙に響き渡る。
持参した懐中電灯で辺りを照らすと北野ドリームランドのキャラクターであったピエロの看板が光に照らされ、半分崩れ落ちたそれが不気味さを一層強調していた。
「よっしゃ。行くか」
「ネットで調べたらメリーゴーランドは結構奥の方みたいだ」
川田とクロは崩れたゲートをひょいとくくりぬけてどんどん進んでゆく。
こんなところに一人で置き去りにされたらと思うと怖すぎる。俺は慌てて二人を追いかけた。
「ほんとに誰もいねーな。貸し切りだ。イエーイ!」
ジェットコースターやミラーハウスなどの廃墟を4人で進んでいく。
ヤマは途中で妙なテンションで叫んでいた。もしかしたらヤマも怖いから無理やり明るい雰囲気にしているのかもしれない。
「お、あれじゃね?」
「本当だ。メリーゴーランドだ。動いてねーじゃん」
しばらく歩くと前方に円形の平べったい遊具が見えた。テントの様な屋根に旗が立っていて、一段のメリーゴーランドは他の遊具同様に静寂の中でひっそりと佇んていた。
動いていなくてよかった。
俺は心の中でホッとした。だって、万が一動いてたらどうするんだ?
「やっぱりガセネタなんだよ。メリーゴーランドが勝手に動くわけないだろ」
少し元気になった俺は3人にそういった。
3人ともがっかりしている。当然だ。ここまで一時間も自転車を漕いできてクタクタだし、時間ももう深夜だった。
「目的は達したし、帰ろうぜ」
俺は3人に帰宅を促した。
こんな廃園は気味が悪いからさっさと出たい。それに、このメリーゴーランドで猟奇殺人が起きたことは間違いないんだ。
「しゃーねーな。記念写真だけ撮って帰るか」
川田は本当に残念そうにしていたが、動いていないものはどうしようもない。俺たちは見に行ったという証拠の写真を撮ってから帰ることにした。
「はい。撮るぞー。3,2,1」
俺たちはスマホと片手に順番に写真を撮り合った。
最初はメリーゴーランドの前でメリーゴーランドをバックに撮っていたが、段々と恐怖心がなくなってきて誰ともなく馬に跨って撮ろうとう話になった。川田がカメラマン役で俺ら3人は馬に跨る。
「いいねー。もっとポーズ撮れよ!」
川田もノリノリで指示を出して、ヤマは有名なナポレオンの肖像画のポーズを真似たりして笑いをとっていた。
その時、ガタンという音と振動がした。