無意識に画鋲(がびょう)を抜き、その空の写真を手に持って写真の裏を見た。


そこには『高柳 啓(たかやなぎ けい)』という文字。人の名前だろう。


「卒業生の撮った写真なのかな…?」千穂は残念そうに口にしながらも写真に目を奪われていた。

そんな千穂の元へ、勢い良くドアを開け。とある生徒が近くまで歩いてきた。


近くに迫ってくるので、千穂はそっと1歩後ろに下がった。


「おい、あんたが千穂か?」


「そうですけど…なにか私に用ですか?」


心当たりの無い千穂はそう聞き返した。


「こんな廃部寸前の写真部に絶対入部するって言ってる新入生が来たって、それも澄佳先輩の妹だって聞いて、どんなのが来たのかと見に来たんだよ」


「そんな興味本位で見に来られても、良い事なんか無いですよ。先輩?は、それだけの為に来たんですか?それに、私の名前だけ知られてて先輩の名前を教えてくれないなんて、少しずるいです」


千穂は失礼だとは思ったが興味本位で来られ、名前も知られてるにしては、こちらだけ知らないのは少し嫌に思った。


「あー、悪い悪い。俺は写真部2年の高柳啓だよ。これからよろしく」


高柳 啓…。てことは、この空の写真を撮った人?