教室に入ると同時に、ある人物と瞳が合う。
それは魔法がかかったかと思ってしまうほど、そらすことができず、私の見ている世界の時間が止まったかのように感じた。
「どうしたの、美空?入らないの?教室ここだよ」
友達の声も、聞き流すことしかできない。
そんな私を見かねて、後ろから友達が背中を少し強く押して、私を前に進めようとする。
「ほら、美空ってば!」
「あ、うん。ごめんごめん」
そしてやっと、視線がズレた瞬間私の止まっていた時間が動いた。
「もーどうしたの?」
私の前の席に座った友達が振り返る。
「あ、ちょっと同じクラスじゃない人もいてビックリしちゃっただけ」
「あーそっか。D組の地理選択者と合同授業だもんね」
「そうそう!知らなかったからさ」