そのまま葉月君は日向君のほうに行ってしまった。



「・・・」



もし、もしだけど。

私が葉月君の立場だったら相当辛いはずだ。

相手に好きな人がいて、それが両想いだなんて。

入る隙がどこにもないじゃないか。




「あの、これ下さい・・・!」



だから私は、頑張ろうと思うんだ。


まだ、少しでもチャンスがあるなら。


日向君に好きな人がいようと、それが彼女じゃないのなら。


臆病な自分に少しでも勇気を与えるために。



「・・・はい。ありがとうございます」



優しく微笑んだ店員さんに、私も微笑み返した。