そういえば、と廊下からする二人の喧嘩口調の声を聞きながら思い出した。


二人がもうすぐ一年記念日だったことに。



莉奈は惚気ることを滅多にしないけど、そんなことしなくても彼氏の平松君のことが大好きというのが一緒にいて伝わってくる。




いいなー……。


いつか私も、誰かを大好きになったり、誰かにヤキモチ妬いたりするのかな。



「……・はぁ、」



駄目だ、私の青春終わってる。



もちろん恋だけが青春の全てとは言わないけど、やっぱり莉奈達を見てると羨ましくならないわけがない。



(すきなひと、か~・・・)



なんて慣れない五文字を心の中で呟いてみたものの、浮かび上がる人物像が誰一人といない事に虚しさを覚える。


本日二度目の小さく呟いた溜息は「おーい、大地」という声にかき消されてしまった。