「いっちゃん……?」

「おい、どうしたんだよ?」

「染井?」


三人から口々に話しかけられた俺は、頬を伝う雫に気づいて右手でそれを拭った。
美乃の笑顔にホッとして、彼女が無事だったことに安心し、気が抜けたのかもしれない。


直後、自分が泣いている理由を理解した。


「美乃が好きだ……」


そのことに気づいたのと同時に、自覚したばかりの想いを伝えていた。
信二と広瀬はただ呆然としていたし、それはもちろん美乃も同じだった。
彼女は照れるわけでもなく、ただ目を丸くして言葉にならないみたいだった。


ただ……この時、一番驚いていたのは、間違いなく俺自身だ。


自分の気持ちに気付いた瞬間、言葉にしていたなんて。
ましてや自分から告白をするなんて、今までの俺なら絶対にありえないことだった。


だけど、今言わないと一生後悔するような気がした。
俺の前から、美乃がいなくなってしまうような、そんな嫌な予感がしたんだ。


長い長い沈黙を最初に砕いたのは、他の誰でもない彼女だった。


「それは同情?」


美乃は、今までに見たことがないような冷たい眼差しで俺の瞳を真っ直ぐ見つめている。


「違う、愛情だ」


俺も彼女の瞳を真っ直ぐ見つめ返し、きっぱりと答えた。
たった今気づいた想いだけれど、俺にはもう迷いはなかった。