「私がそばにいるから!……違うな。うーん」

 仕事で疲れたかのん君が早々に寝てしまったあと、私はぶつぶつと見えない敵と戦う口上を考えて居た。かのん君が私を助けてくれたように、私もかのん君を助けたいんだけどな。

「もうよく分かんないや」

 そんなことを考えていたら時刻は深夜を回ってしまってた。いけない、早く寝ないと……。

「そんな台詞、言う機会がないのが一番だけどね……」



 そんな風にして眠りについた翌朝、かのん君のノックで目を覚ました。

「真希ちゃーん朝ご飯だよー」
「ふぁーい」

 ああ、寝不足だ。かのん君は夜遅くまで仕事だったのに起きてご飯を作ってくれたらしい。

「あー、ふあー」
「眠そうだね、夜更かししたから」
「かのん君は元気だねー」
「うーん、なんか興奮してるのかも……。俺ね、今度テレビに出るんだ」
「えっ……?」

 かのん君の突然の告白に私は食べてたパンをおっことしそうになった。

「テレビ……?」
「うん、前から山口さんから出ないかって言われてたんだけど」
「なんで急に?」
「なんか覚悟が出来たっていうか。ちゃんと芸能界で生き残らなきゃって思って」

 かのん君はちょっとインタビューに答えましたみたいな言い方だけど、違うよね。これ。なんで急にこんな事言いだしたんだろう。

「それってどんな番組?」
「うん、バラエティなんだけど……」
「えっ……?」

 またまた私はパンを落としそうになった。ええい、とっとと食べてしまおう。

「それってトーク番組とか……?」
「ううん、クイズ番組だよ」

 放映が決まったら教えるとかのん君が言っているのを私は上の空で聞いていた。なんか……いやな予感がする。



「それでは今週の『クイズでかまって』はじまりましたー、司会のかまいたち虹朗です。
いくわよーそれではゲスト! 若手俳優の真鍋敦之さんに新人女優のあさか令佳さん、それからモデルのかのんさんでーす」

 そして放映日、私はテレビの前に釘付けになっていた。大人気おねぇタレントかまいたち虹朗の看板番組。ゴールデンタイムの放送に、かのん君はゲストで出ていた。

「いやー今日はフレッシュな顔ぶれですね」

 サブ司会の局アナが合いの手を入れる。

「なかでも、かのんさんはテレビ初登場だとか」
「よろしく、おねがいします」

「いやーん、緊張しちゃってかわいい~、私がもみほぐしてあげようかしら」
「あ……大丈夫です」
「ちょっとー、しょっぱーい。かまうぃっしゅ!」

 かのん君の素の反応に対して、かまいたち虹朗はお決まりの一発ギャグで場を和ませた。やるな……さすがプロ。
 そうして、クイズ番組らしく、セットへとゲスト達は移動する。この番組は一般常識をどれだけ答えられるかを競い合い、答えられなければ罰ゲームが待っている。

「それじゃあ第一問……」

 かのん君とほかのゲスト達は次々と答えて行き、出来なければセンブリ茶や、グルグルバットをさせられていた。芸人さんが出るようなのと違って罰ゲームもマイルドなようだ。
 そしてコーナーはそれぞれのゲストに関するフリートークへと移っていった。

「かのん君はモデルだそうだけどぉ、メイクばっちりね」
「これは元々趣味でして……」
「お母さんの鏡台から口紅盗ったりしたぁ? あたしはそうだったのよぉ」
「いえ、小さい頃はそんな事なくて中学くらいですね、周りの女の子達がメイクしてるの見て自分もやりたくなって」

 ここまではかのん君から以前聞いた内容だ。かまいたちさんはそれを聞いてぐいっと身を乗り出した。

「そうなの? 男の人好きとかじゃなくて?」
「それはないです、彼女もいますし」
「ええ~、残念かまういっしゅー」
「めちゃくちゃかわいいです」
「ああ~」

 スタジオはドッと笑いに包まれた。そして画面をみていた私は恥ずかしさで身もだえていたのだった。かのん君が人前でのろけるのはいつもの事だけど、これは日本全国にむけてだもん。そりゃ恥ずかしいよ。