「ここは普通に観光地じゃなくてですね、聖地ですからね」
そんな諸注意を受けてガイドさんの後をついて行く。足下は意外と悪くて、ビーチサンダルの私はちょっとひやっとした。あちこちに設置されたイビという神域や南国の神秘的な緑の空間を抜けていく、そうすると三角形の切れ目を形作った大きな岩が現れた。
「ここは三庫理さんぐーい。安定の場所、とも言われています」
「安定の場所……」
ひんやりと冷たい岩壁からは不思議な安心感が伝わってくる。ここが聖地だから? 気のせいだろうか。そうだ、今だ。
「……かのん君」
「なぁに、真希ちゃん」
「これあげる」
私は小さな包みをかのん君に渡した。
「誕生日おめでとう。24歳おめでとう」
「真希ちゃん! ありがとう」
夕食の時にでも渡そうと思ったけど、今渡したくなった。これからの私達の安定を祈念して。包みの中身は小さなシルバーのネックレス。ダイヤ型のチャームがユニセックスでかのん君ぽいなと思って買ったのだ。
「うわ、かわいい。……つけてもいい?」
「うん、もちろん」
かのん君の白い肌にチラリと光る銀の光。沖縄の神様でも私達の仲を守ってくれるかしら。
海と自然を満喫した私達は一旦ホテルへと戻った。そしてエステを受けた。アロマオイルで磨き抜かれた私とかのん君。
「生き返る……」
「私、やっぱ日焼けしちゃってた」
「え、どこどこ」
「ここ」
そう無防備に背中をみせてから、日焼けの跡をかのん君に指でなぞられて赤面する。
「あの……かのん君」
「シミになんなきゃいいけど……ん?」
「あの、恥ずかしい」
「あっ、あ! ごめん!」
かのん君もようやくこの事態に気づいたらしく慌てて俯いた。
「そろそろ夕食、行こうか」
「うん」
今日の夕食はホテル内のレストラン。かのん君は麻のジャケットを着て、私は白いサマーワンピースでちょっとオシャレをする。待っているのは沖縄県産の海産物や農産物をふんだんに使ったフレンチだ。
「それじゃ、乾杯」
「乾杯」
かわいらしいアペリティフを頂きながら、夕闇に染まっていく海を眺める。まるで宝石箱の中にいるみたい。スッと背筋を伸ばしてナイフとフォークを使いこなすかのん君はいつもより大人びて見える。
「かのん君、王子様みたい」
「それじゃ、真希ちゃんはお姫さまだね」
こんな台詞が自然と出てきちゃうのは御獄のご加護か、それとも単なる旅先の開放感か。そしてディナーの締めは、小さなミニバーズデーケーキだ。周りのお客さんからも拍手を貰いながらかのん君は楽しそうにしていた。
「『人生で最高のバースデーを過ごしました』っと」
かのん君はさっそくケーキの画像をSNSに上げたようだ。
「人生っておおげさじゃない?」
「ううん、真希ちゃんがここにいてここは沖縄で本当に最高の最高」
「じゃあ、来年はもっと最高にしないとね」
微笑んで、何気なくそう言うとかのん君が固まった。そしてとろけるような笑顔を向けてくる。
「そうだね。……そろそろ部屋に戻らない?」
「……うん」
私達は腕を組んで部屋へと向かう。触れた肌が熱いのは日焼けのせいじゃない。部屋のドアを閉めるとかのん君はジャケットを脱いだ。
「……」
私は思いきって部屋の電気を消した。ベッドサイドの明かりだけがぼんやりと点いている。首筋のリボンを外すと、するりとワンピ―スが床に落ちた。あとは真っ赤な下着姿だけの私。
「真希ちゃん」
「も、もう一個……誕生日プレゼントがあります……こんなんだけど」
「……最高だよ」
かのん君は私を抱き寄せてこれまでにない位深いキスをした……。その後はかのん君に翻弄されて何もわからなくなった。
そんな諸注意を受けてガイドさんの後をついて行く。足下は意外と悪くて、ビーチサンダルの私はちょっとひやっとした。あちこちに設置されたイビという神域や南国の神秘的な緑の空間を抜けていく、そうすると三角形の切れ目を形作った大きな岩が現れた。
「ここは三庫理さんぐーい。安定の場所、とも言われています」
「安定の場所……」
ひんやりと冷たい岩壁からは不思議な安心感が伝わってくる。ここが聖地だから? 気のせいだろうか。そうだ、今だ。
「……かのん君」
「なぁに、真希ちゃん」
「これあげる」
私は小さな包みをかのん君に渡した。
「誕生日おめでとう。24歳おめでとう」
「真希ちゃん! ありがとう」
夕食の時にでも渡そうと思ったけど、今渡したくなった。これからの私達の安定を祈念して。包みの中身は小さなシルバーのネックレス。ダイヤ型のチャームがユニセックスでかのん君ぽいなと思って買ったのだ。
「うわ、かわいい。……つけてもいい?」
「うん、もちろん」
かのん君の白い肌にチラリと光る銀の光。沖縄の神様でも私達の仲を守ってくれるかしら。
海と自然を満喫した私達は一旦ホテルへと戻った。そしてエステを受けた。アロマオイルで磨き抜かれた私とかのん君。
「生き返る……」
「私、やっぱ日焼けしちゃってた」
「え、どこどこ」
「ここ」
そう無防備に背中をみせてから、日焼けの跡をかのん君に指でなぞられて赤面する。
「あの……かのん君」
「シミになんなきゃいいけど……ん?」
「あの、恥ずかしい」
「あっ、あ! ごめん!」
かのん君もようやくこの事態に気づいたらしく慌てて俯いた。
「そろそろ夕食、行こうか」
「うん」
今日の夕食はホテル内のレストラン。かのん君は麻のジャケットを着て、私は白いサマーワンピースでちょっとオシャレをする。待っているのは沖縄県産の海産物や農産物をふんだんに使ったフレンチだ。
「それじゃ、乾杯」
「乾杯」
かわいらしいアペリティフを頂きながら、夕闇に染まっていく海を眺める。まるで宝石箱の中にいるみたい。スッと背筋を伸ばしてナイフとフォークを使いこなすかのん君はいつもより大人びて見える。
「かのん君、王子様みたい」
「それじゃ、真希ちゃんはお姫さまだね」
こんな台詞が自然と出てきちゃうのは御獄のご加護か、それとも単なる旅先の開放感か。そしてディナーの締めは、小さなミニバーズデーケーキだ。周りのお客さんからも拍手を貰いながらかのん君は楽しそうにしていた。
「『人生で最高のバースデーを過ごしました』っと」
かのん君はさっそくケーキの画像をSNSに上げたようだ。
「人生っておおげさじゃない?」
「ううん、真希ちゃんがここにいてここは沖縄で本当に最高の最高」
「じゃあ、来年はもっと最高にしないとね」
微笑んで、何気なくそう言うとかのん君が固まった。そしてとろけるような笑顔を向けてくる。
「そうだね。……そろそろ部屋に戻らない?」
「……うん」
私達は腕を組んで部屋へと向かう。触れた肌が熱いのは日焼けのせいじゃない。部屋のドアを閉めるとかのん君はジャケットを脱いだ。
「……」
私は思いきって部屋の電気を消した。ベッドサイドの明かりだけがぼんやりと点いている。首筋のリボンを外すと、するりとワンピ―スが床に落ちた。あとは真っ赤な下着姿だけの私。
「真希ちゃん」
「も、もう一個……誕生日プレゼントがあります……こんなんだけど」
「……最高だよ」
かのん君は私を抱き寄せてこれまでにない位深いキスをした……。その後はかのん君に翻弄されて何もわからなくなった。