「真希ちゃん」
「はーい」
「真希ちゃーん」
「はいはい」
この無意味な会話。見るからにバカップルである。だけどここは私の家だし、誰の目もないから構わないのだ。かのん君の叔父さんのカフェバーに行ってから、私はかのん君の濃厚な求愛からあんまり逃げなくなった。それをいいことにかのん君の行動はエスカレートしている。
「今、火使ってるから待っててよ」
「待ってるよー」
本日は私の自宅にて、はじめてかのん君に手料理を振る舞う予定だ。献立は、ブリの照り焼きにほうれん草のおひたし、それからおあげともやしの味噌汁に炊きたてごはん。
本当に普通。毎日食べられる普通の和食。以前ならかのん君はこういうの食べないかもとびくびくしながら出してたかもしれないけど、今なら大丈夫。
「うん、こんなもんかな」
焦げやすい照り焼きが上手くいったところでテーブルに並べる。かのん君も自然とそれを手伝ってくれる。
「おいしそー」
「さあ、召し上がれ」
「はい頂きます」
キチンと手を合わせて、かのん君は味噌汁を一口啜った。
「……おいしい」
「ゴマ油でもやしとおあげを炒めてあるの。コクが出るんだ」
「うーん、真希ちゃんのごはんってすごくほっとする」
ぱくぱくと食欲旺盛にかのん君は私の作ったご飯をほおばっている。
「かのん君がいっぱい食べてくれてうれしい」
「俺も、やっと真希ちゃんのごはんが食べられてうれしいな」
ほのぼのとした空気が二人の間に流れる。付き合い初めて間もないけれど、ずっとこうしていたような錯覚に陥る。その、夜のそういう事もまだなんだけど。
「また真希ちゃんのごはん食べたい! ……いい?」
「もちろん」
そんなおねだりも可愛くてしかたない。私は優しく見つめるかのん君の瞳を覗きこむ。あ……この感じ……キス、かな。
「……真希ちゃん」
「かのん、君」
今にも唇と唇が触れそうになった瞬間。私のスマホがピロンと通知音を立てた。
「んー! もう!」
音消しておけばよかった。ブツブツ言いながらスマホを覗くと桜井さんからのメッセージだった。
『ちょっと、大変』
なんだろう? かのん君の方をチラリと見ると不満そうに唇を尖らせていた。
『なに? どうしたの?』
かのん君の事を気にしながら、そっと返信するとすぐに既読がついて返信が来た。それを見た私は度肝を抜かれた。
『あんた、さらされてる』
どういう事? 嫌な予感がしながら、私はどういう事か桜井さんに聞いた。すると、しばらくの間があって画像が送られてきた。
『これ、あんたよね』
桜井さんの送ってきたのは確かに私の写真だった。それも、どっか明後日を向いていて隠れて撮ったような写真だ。呆然としていると、もう一枚の画像が送られてきた。それは先日かのん君が、私の事を彼女だと宣言したSNSの画像を加工したもの。『耳の形が一致』そう書き添えられている。
「か、かのん君……どうしよ……」
「なに、真希ちゃんどうしたの?」
震える手でスマホをかのん君を見せると、彼の顔がサッと曇った。
「これネットのか……この服この間の土曜日に着ていたやつじゃない?」
「あ、そうかも……」
確かにこのトップスを着ていった気がする。それじゃあ、これはその時に撮られたって事!?
『これどこで見つけたの?』
『メッセージアプリに貼られてて、かのん君のアカウントチェックしてたら見つけたの』
桜井さんに聞くと、そう教えてくれた。ああ、なんだろう胸がドキドキする。
「真希ちゃん、すぐに対処するから」
かのん君が、私の手を強く握る。そして私を抱きしめた。かのん君の香りに包まれて、少しだけほっとした。
「真希ちゃんはちょっと横になるといいよ」
「うん……」
私はベッドに横たわった。ちょっとこの展開はキャパオーバーなのが自分でも分かる。
「どうなっちゃうの……?」
かのん君がどこかと連絡をとっている声を横で聞きながら、私は目を瞑ってこれからを考えながら眉間を押さえた。
「はーい」
「真希ちゃーん」
「はいはい」
この無意味な会話。見るからにバカップルである。だけどここは私の家だし、誰の目もないから構わないのだ。かのん君の叔父さんのカフェバーに行ってから、私はかのん君の濃厚な求愛からあんまり逃げなくなった。それをいいことにかのん君の行動はエスカレートしている。
「今、火使ってるから待っててよ」
「待ってるよー」
本日は私の自宅にて、はじめてかのん君に手料理を振る舞う予定だ。献立は、ブリの照り焼きにほうれん草のおひたし、それからおあげともやしの味噌汁に炊きたてごはん。
本当に普通。毎日食べられる普通の和食。以前ならかのん君はこういうの食べないかもとびくびくしながら出してたかもしれないけど、今なら大丈夫。
「うん、こんなもんかな」
焦げやすい照り焼きが上手くいったところでテーブルに並べる。かのん君も自然とそれを手伝ってくれる。
「おいしそー」
「さあ、召し上がれ」
「はい頂きます」
キチンと手を合わせて、かのん君は味噌汁を一口啜った。
「……おいしい」
「ゴマ油でもやしとおあげを炒めてあるの。コクが出るんだ」
「うーん、真希ちゃんのごはんってすごくほっとする」
ぱくぱくと食欲旺盛にかのん君は私の作ったご飯をほおばっている。
「かのん君がいっぱい食べてくれてうれしい」
「俺も、やっと真希ちゃんのごはんが食べられてうれしいな」
ほのぼのとした空気が二人の間に流れる。付き合い初めて間もないけれど、ずっとこうしていたような錯覚に陥る。その、夜のそういう事もまだなんだけど。
「また真希ちゃんのごはん食べたい! ……いい?」
「もちろん」
そんなおねだりも可愛くてしかたない。私は優しく見つめるかのん君の瞳を覗きこむ。あ……この感じ……キス、かな。
「……真希ちゃん」
「かのん、君」
今にも唇と唇が触れそうになった瞬間。私のスマホがピロンと通知音を立てた。
「んー! もう!」
音消しておけばよかった。ブツブツ言いながらスマホを覗くと桜井さんからのメッセージだった。
『ちょっと、大変』
なんだろう? かのん君の方をチラリと見ると不満そうに唇を尖らせていた。
『なに? どうしたの?』
かのん君の事を気にしながら、そっと返信するとすぐに既読がついて返信が来た。それを見た私は度肝を抜かれた。
『あんた、さらされてる』
どういう事? 嫌な予感がしながら、私はどういう事か桜井さんに聞いた。すると、しばらくの間があって画像が送られてきた。
『これ、あんたよね』
桜井さんの送ってきたのは確かに私の写真だった。それも、どっか明後日を向いていて隠れて撮ったような写真だ。呆然としていると、もう一枚の画像が送られてきた。それは先日かのん君が、私の事を彼女だと宣言したSNSの画像を加工したもの。『耳の形が一致』そう書き添えられている。
「か、かのん君……どうしよ……」
「なに、真希ちゃんどうしたの?」
震える手でスマホをかのん君を見せると、彼の顔がサッと曇った。
「これネットのか……この服この間の土曜日に着ていたやつじゃない?」
「あ、そうかも……」
確かにこのトップスを着ていった気がする。それじゃあ、これはその時に撮られたって事!?
『これどこで見つけたの?』
『メッセージアプリに貼られてて、かのん君のアカウントチェックしてたら見つけたの』
桜井さんに聞くと、そう教えてくれた。ああ、なんだろう胸がドキドキする。
「真希ちゃん、すぐに対処するから」
かのん君が、私の手を強く握る。そして私を抱きしめた。かのん君の香りに包まれて、少しだけほっとした。
「真希ちゃんはちょっと横になるといいよ」
「うん……」
私はベッドに横たわった。ちょっとこの展開はキャパオーバーなのが自分でも分かる。
「どうなっちゃうの……?」
かのん君がどこかと連絡をとっている声を横で聞きながら、私は目を瞑ってこれからを考えながら眉間を押さえた。