「あーやっぱり、食べきれなかったね」
二人で取りかかっても、食べきれなかったLサイズピザにラップを掛けて冷蔵庫にしまう。もったいないから明日暖めて食べよう。
「ピザとか久し振りに食べたー」
「映画とピザ、いいでしょ」
「うん」
元彼ハルオを撃退した後、私はすぐにピザを注文して動画配信で頭が空っぽになりそうなハリウッドアクション映画をかのん君と見た。ぼーっと、轟音や銃撃音を頭に詰め込んでいると嫌なことが消えて行く。私なりの気分転換法だ。
「遅くなっちゃったね」
時計を見ると十一時を回っている。駅での待ち合わせに、さっきの騒動もあったし……。
「ほんとだ、じゃ俺そろそろ帰るよ」
「えっ?」
かのん君は私の視線に釣られて時計を見ると、あっさりと立ち上がった。あ……もうちょっとごねるかと思ったのに。
「なに? まだ怖い?」
「え? いや……そんな事ないけど」
「それとも、お泊まりさせてくれるのかな?」
「あっ」
かのん君の手が私の掌を包みこむ。私を見るその目の奥の熱っぽさにグラグラの私の理性。思わず流されそうになる。
「なーんてね」
「ふぁっ」
かのん君が突然口調を変えて、私の手をぱっと離した。
「この際、真希ちゃんとのはじめては、思いっきりロマンチックにしちゃおうかなーなんて」
「かっ、かのん君!」
「それは半分冗談だとして、ちゃんと俺は待つよ。真希ちゃんの心が決まるまで」
「……」
見透かされている。かのん君と一緒にいるのは楽しい。好きだ、とも思う。だけど、男と女としてこれから付き合っていけるのか。自分の中ではっきりしない所があるのだ。
「……色々急だったから。その、整理出来てないしあとかのん君の事もっと知りたいの」
そう思ったら自然と本音が口を突いて出た。
「それに、本当は私……かのん君の彼女でいる自信がないのかもしれない」
「真希ちゃん……」
やばい、泣きそうだ。そんな私の肩をかのん君の両手が優しく包んだ。
「大丈夫。時間はたっぷりあるよ。俺のこと沢山教えてあげる。……だから、真希ちゃんのことも俺に教えて?」
「うん……」
「いつか仕事場も見て欲しいし、真希ちゃんの好きな山も……行ってもいいかな」
「かのん君」
私はかのん君の首に縋り付いた。泣くのをがまんしてぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて。ふんわりとバニラの香りが濃くなる。それで私はかのん君から香るバニラの香りの正体が香水である事を知った。
「じゃ、俺の理性が効いているうちに帰るね。念の為、明日も一緒に帰ろう」
「うん。今度こそ私、ちゃんと料理するね」
一緒にスーパーにも寄ろう。さっきと打って変わって楽しい想像が頭を巡る。かのん君は私の頭をくしゃっと撫でると玄関から出て行った。
「はやく寝るんだよー、お肌に悪いからね」
「うん、かのん君も」
玄関先で小さく手を振ってエレベーターに消えて行くかのん君の姿を見送った。そうか、かのん君は私の事すごく大事に考えてくれている。お互い分かんない事があってもこれから知ればいいんだ。
「やっぱりかのん君はかっこいいよ」
一人になって素直になると、いくらでも言える。……にしてもかのん君は私なんかのどこがいいんだろう。あれ? 私、かのん君に醜態しかさらして無くない!?
「ぎぎぎ……一体何が……」
何があんなにかのん君を熱くさせるんだろう。私はかのん君の忠告も空しく、深夜までその事について考え続けたのだった。
二人で取りかかっても、食べきれなかったLサイズピザにラップを掛けて冷蔵庫にしまう。もったいないから明日暖めて食べよう。
「ピザとか久し振りに食べたー」
「映画とピザ、いいでしょ」
「うん」
元彼ハルオを撃退した後、私はすぐにピザを注文して動画配信で頭が空っぽになりそうなハリウッドアクション映画をかのん君と見た。ぼーっと、轟音や銃撃音を頭に詰め込んでいると嫌なことが消えて行く。私なりの気分転換法だ。
「遅くなっちゃったね」
時計を見ると十一時を回っている。駅での待ち合わせに、さっきの騒動もあったし……。
「ほんとだ、じゃ俺そろそろ帰るよ」
「えっ?」
かのん君は私の視線に釣られて時計を見ると、あっさりと立ち上がった。あ……もうちょっとごねるかと思ったのに。
「なに? まだ怖い?」
「え? いや……そんな事ないけど」
「それとも、お泊まりさせてくれるのかな?」
「あっ」
かのん君の手が私の掌を包みこむ。私を見るその目の奥の熱っぽさにグラグラの私の理性。思わず流されそうになる。
「なーんてね」
「ふぁっ」
かのん君が突然口調を変えて、私の手をぱっと離した。
「この際、真希ちゃんとのはじめては、思いっきりロマンチックにしちゃおうかなーなんて」
「かっ、かのん君!」
「それは半分冗談だとして、ちゃんと俺は待つよ。真希ちゃんの心が決まるまで」
「……」
見透かされている。かのん君と一緒にいるのは楽しい。好きだ、とも思う。だけど、男と女としてこれから付き合っていけるのか。自分の中ではっきりしない所があるのだ。
「……色々急だったから。その、整理出来てないしあとかのん君の事もっと知りたいの」
そう思ったら自然と本音が口を突いて出た。
「それに、本当は私……かのん君の彼女でいる自信がないのかもしれない」
「真希ちゃん……」
やばい、泣きそうだ。そんな私の肩をかのん君の両手が優しく包んだ。
「大丈夫。時間はたっぷりあるよ。俺のこと沢山教えてあげる。……だから、真希ちゃんのことも俺に教えて?」
「うん……」
「いつか仕事場も見て欲しいし、真希ちゃんの好きな山も……行ってもいいかな」
「かのん君」
私はかのん君の首に縋り付いた。泣くのをがまんしてぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて。ふんわりとバニラの香りが濃くなる。それで私はかのん君から香るバニラの香りの正体が香水である事を知った。
「じゃ、俺の理性が効いているうちに帰るね。念の為、明日も一緒に帰ろう」
「うん。今度こそ私、ちゃんと料理するね」
一緒にスーパーにも寄ろう。さっきと打って変わって楽しい想像が頭を巡る。かのん君は私の頭をくしゃっと撫でると玄関から出て行った。
「はやく寝るんだよー、お肌に悪いからね」
「うん、かのん君も」
玄関先で小さく手を振ってエレベーターに消えて行くかのん君の姿を見送った。そうか、かのん君は私の事すごく大事に考えてくれている。お互い分かんない事があってもこれから知ればいいんだ。
「やっぱりかのん君はかっこいいよ」
一人になって素直になると、いくらでも言える。……にしてもかのん君は私なんかのどこがいいんだろう。あれ? 私、かのん君に醜態しかさらして無くない!?
「ぎぎぎ……一体何が……」
何があんなにかのん君を熱くさせるんだろう。私はかのん君の忠告も空しく、深夜までその事について考え続けたのだった。