『お前、いつまで連絡寄越さないつもりだよ』
元彼ハルオが送ってきた文面を、意味も無く何度も読み返す。いつまでって永遠にだよ。そう心では思う。それをそのまま送ってしまおうか。それとも文句のひとつも言ってやろうか。
「ま、既読無視が一番か」
下手に連絡とるのも、かのん君に対して不誠実かもしれない。うん、きっとそうだ。私はハルオへの返信をやめることにした。このままブロックしてしまおう。そうすれば二度と連絡を寄越す事もないだろう。私はハルオの連絡先をブロックの操作をした。はぁ、せいせいした。
どっと疲れて帰宅した私は、鞄を放り投げて着替えもせずにベッドに転がる。頭を過ぎるのは誕生日のあの日。
「真希、お前に伝えたい事がある。ごめん、俺別に好きな娘ができたんだよね」
「は? どうしたの」
「だから会うのは今日でお仕舞いってことで」
誕生日プレゼントに寄越されたのは別れの言葉だった。元々自分勝手なところがある人だったけれど、もしやプロポーズと構えていた自分には相当なダメージがあった。
誕生日に予約していたイタリアンから、どうやって高円寺まで帰って来たのかも、べろべろに酔いつぶれるまでどこでどうしていたのかもショックで曖昧だ。
「あー、あー忘れよ」
振り払うように大きな声をだすと、スマホに通知が届いた。
『よかったね!』
かのん君からのメッセージ。さっきの喜んで貰えたっていうメッセージテンションの高いウサギのスタンプが踊っている。
『うん』
そう返して、言葉を打つのは恥ずかしいのでハートのスタンプを送った。それでようやく安心して、私はお風呂に入って残り物で適当に夕飯を済ませ早々に眠ってしまった。
それが、のちの騒動につながるとはつゆとも知らずに……。
「ええーっ!?」
翌日、ハルオから連絡があった事を職場で桜井さんに伝えるとまるで毛虫を見つけたような顔をして、彼女は顔をしかめた。
「だって別れてるんでしょ?」
「うん、他に好きな人が出来たって。この間もにも言ったけどさ」
「……あんた、気を付けなよ」
桜井さんはちょっと低い声で私に囁いた。
「そんなメッセ寄越してくるなんて、ハルオの中では別れてるって事になってないんじゃないの?」
「まさかー」
「あんまり人の言う事聞くタイプじゃないじゃない、うかつな事してないでしょうね」
「……ブロックしちゃった」
それを聞いた桜井さんは盛大に息を吐いた。私を見る目が冷たい……。
「心配だから、あんたしばらくかのん君と一緒に家まで帰りなさいよ」
「それは大げさじゃない?」
「念の為よ」
うーん、桜井さんが私を案じてるのは伝わってくる。まぁ元は彼氏だった訳で、私の自宅はハルオには知られてる。はーあ、かのん君に状況を説明しないとかぁ……。そっか、ブロックまでは行きすぎだったか。心配をかけてしまうなぁ。
「わかった、相談してみる」
私はそう言うと、かのん君に電話をかけて事の次第としばらくの付き添いをお願いした。
「そういう訳で、しばらくでいいから一緒におうちに帰ってくれないかな」
「そういう事は早く言ってよね。もう」
「ごめん……」
「怒ってるわけじゃないよ、真希ちゃん。それじゃ、お互い仕事が終わったら駅前のコーヒー店で待ち合わせしよ」
そうして通話は切れた。無機質な通話時間の表示文字が今は痛い。続いて、送信されたのはかのん君の自撮り写真だった。
『これ、お守り』
私はその画像を即、保存した。待ち受けにしよう。
『ごめんね、かのん君』
『大丈夫、だって俺が真希ちゃんの彼氏なんだから』
いつものウサギのスタンプとともにメッセージが届く。今度はそれに温かい気遣いを感じて、私はスマホの画面にそっと頬を寄せた。
元彼ハルオが送ってきた文面を、意味も無く何度も読み返す。いつまでって永遠にだよ。そう心では思う。それをそのまま送ってしまおうか。それとも文句のひとつも言ってやろうか。
「ま、既読無視が一番か」
下手に連絡とるのも、かのん君に対して不誠実かもしれない。うん、きっとそうだ。私はハルオへの返信をやめることにした。このままブロックしてしまおう。そうすれば二度と連絡を寄越す事もないだろう。私はハルオの連絡先をブロックの操作をした。はぁ、せいせいした。
どっと疲れて帰宅した私は、鞄を放り投げて着替えもせずにベッドに転がる。頭を過ぎるのは誕生日のあの日。
「真希、お前に伝えたい事がある。ごめん、俺別に好きな娘ができたんだよね」
「は? どうしたの」
「だから会うのは今日でお仕舞いってことで」
誕生日プレゼントに寄越されたのは別れの言葉だった。元々自分勝手なところがある人だったけれど、もしやプロポーズと構えていた自分には相当なダメージがあった。
誕生日に予約していたイタリアンから、どうやって高円寺まで帰って来たのかも、べろべろに酔いつぶれるまでどこでどうしていたのかもショックで曖昧だ。
「あー、あー忘れよ」
振り払うように大きな声をだすと、スマホに通知が届いた。
『よかったね!』
かのん君からのメッセージ。さっきの喜んで貰えたっていうメッセージテンションの高いウサギのスタンプが踊っている。
『うん』
そう返して、言葉を打つのは恥ずかしいのでハートのスタンプを送った。それでようやく安心して、私はお風呂に入って残り物で適当に夕飯を済ませ早々に眠ってしまった。
それが、のちの騒動につながるとはつゆとも知らずに……。
「ええーっ!?」
翌日、ハルオから連絡があった事を職場で桜井さんに伝えるとまるで毛虫を見つけたような顔をして、彼女は顔をしかめた。
「だって別れてるんでしょ?」
「うん、他に好きな人が出来たって。この間もにも言ったけどさ」
「……あんた、気を付けなよ」
桜井さんはちょっと低い声で私に囁いた。
「そんなメッセ寄越してくるなんて、ハルオの中では別れてるって事になってないんじゃないの?」
「まさかー」
「あんまり人の言う事聞くタイプじゃないじゃない、うかつな事してないでしょうね」
「……ブロックしちゃった」
それを聞いた桜井さんは盛大に息を吐いた。私を見る目が冷たい……。
「心配だから、あんたしばらくかのん君と一緒に家まで帰りなさいよ」
「それは大げさじゃない?」
「念の為よ」
うーん、桜井さんが私を案じてるのは伝わってくる。まぁ元は彼氏だった訳で、私の自宅はハルオには知られてる。はーあ、かのん君に状況を説明しないとかぁ……。そっか、ブロックまでは行きすぎだったか。心配をかけてしまうなぁ。
「わかった、相談してみる」
私はそう言うと、かのん君に電話をかけて事の次第としばらくの付き添いをお願いした。
「そういう訳で、しばらくでいいから一緒におうちに帰ってくれないかな」
「そういう事は早く言ってよね。もう」
「ごめん……」
「怒ってるわけじゃないよ、真希ちゃん。それじゃ、お互い仕事が終わったら駅前のコーヒー店で待ち合わせしよ」
そうして通話は切れた。無機質な通話時間の表示文字が今は痛い。続いて、送信されたのはかのん君の自撮り写真だった。
『これ、お守り』
私はその画像を即、保存した。待ち受けにしよう。
『ごめんね、かのん君』
『大丈夫、だって俺が真希ちゃんの彼氏なんだから』
いつものウサギのスタンプとともにメッセージが届く。今度はそれに温かい気遣いを感じて、私はスマホの画面にそっと頬を寄せた。