いつも穏やか、割合どんなことがあってもそれが崩れることのなかった百瀬。けど、目に見えて苛立っていて。
隠すことも憚られ、いきさつと事情を全部話し始めると、それは火に油を注いでしまったようだった。
「……でも、みーちゃんが泣いたことに関しては、ひとまず引いておく」
「うん。ありがとう」
「いいよ。……――、間宮は、お孫さんなのか」
「うっ、ん。洋助さん、六人お子さんがいて、三番目の娘さん、その人の子供で」
「ずいぶん詳しいね」
「だっ、だって無理矢理吹き込んでくるんだもんっ」
「ふぅん。無理矢理」
「勝手に、の間違いです」
「どちらにしろ腹立つ。――そうだね。僕も勝手に、許せないことがたくさんだ」
「えっ、ええと……」
「みーちゃんを脅してクラス委員にしたり。……僕だって高校入ってからまだないんだ。お昼一緒になんて」
そう言って、百瀬は図書室を出ていこうとした。