渋々と、百瀬は頷いてくれる。
「百瀬、ごめん」
「みーちゃんは悪くないだろ」
「でも、間宮くんも悪くない」
少なくともわたしが泣いたことに関しては。それを譲らなかったわたしに、百瀬は酷く傷付いた表情を隠さない。
……だって……でも、ごめんなさい。
クラス委員の件は、ひとまず今は黙っておくことにした。でないと百瀬は間宮くんに突進していってしまう勢いが未だ健在していたから。
残りの帰路はなんとなく無言で、もう他の生徒は五時限目の準備に取りかかってしまったのか
。真面目な学校だ。靴底のゴムと廊下の摩擦音が会話の代わりになってやけに響く。
百瀬もわたしも言葉なく、足下を見ながらとぼとぼ歩く姿は先生に怒られて立たされる道すがらみたい。
お互いのクラスに戻るため別れるときも、気まずさを抱えたまま拭われることはなかった。
こんなことは、初めてかもしれない。
早く放課後になれという願いは、午後の授業中に激しく空腹を訴えるお腹の音によって、却下された。実質、今日のお昼ご飯はおにぎり二つのうち四分の一しか消化していない。落としたのと、残したもの。
「っ、ふははっ」
教室全体から生温い視線と笑い声が絶えることはない。わたしの席から一番遠い席の男子まで涙を滲ませ笑っている。小夜なんてそこに遠慮がないものだから、先生に注意を受けていた。先生も笑っていたけど。
右斜め三つ前の席からは、堪えきれない馬鹿にしたような笑いがひいひいと漏れていて、それは授業終了まで続いた。
わたしが睨むと、右斜め三つ前の席の間宮くんが肩を震わせついでにこちらを振り返り見ていた。