拳大のおにぎりにかぶりつく。けど強敵はなかなかやはり減ってくれない。いつものことだ。中の具は、やっぱり塩辛かった。
五分くらい無言で食べ続けると、もう堪えきれないといった具合に間宮が吹き出してくる。口内から食べ物が消えてからとは、なんてお上品なことか。汚いのは嫌だけど。
「ふっ」
「……何?」
呼び出したくせにわたしに構わず美味しそうな里芋を器用につまんでいた間宮くんは、吹き出しついでに箸を置いた。
「だってさ、日紫喜さんの、歯と歯がぶつかる音が素晴らしく大きくてね。こんなに必死に食事する女子高生を初めて見たから新種を発見した気分だ」
「今日のメニューに対する必要最低限の行為よ」
このおにぎりは顎の力が鍛えられるのだ。密度濃いからね。
「いやあ、楽しいよ。本当に」
「ええ、そうでしょうね。わたしを陥れたり脅迫したり笑ったり。他人の不幸は蜜の味だもんね」
責めてみたけど効果は皆無だった。
「ごめんごめん。困らせるつもりはなかったんだ。神に誓うよ」
「やっすい神様だね」
「色々誓っているよ。例えば――あのことも、本当は吹聴するつもりなんてない」
「ふ~ん」
「ボクは、一度日紫喜と話してみたかったんだ」