………………昨日。図書室。新聞紙……思い当たるのは……。
「隠さなくてもいいことなら、ここでボクと再現でもしてみるかい? ――百瀬としていたことを」
ずいぶん近くで囁かれたことに、ずいぶんあとで気づく。
ふたりだけだと思ってた放課後の図書室。感じる百瀬の体温。リノリウムの床の軋みと新聞紙が落ちる音。その直前に、百瀬としていた、こと。
背中が、一瞬で冷や汗にまみれた。
「嘘、ばっか、つかないでよ」
「そうかもね。捉え方は日紫喜さん次第。――これでも気を利かせたんだ。逢瀬の邪魔なんて不粋じゃないか」
「だったら最後まで粋にふるまえってのよ」
怯んだら負けだと思った。本当は逃げ出したくて仕方がない。
「否定をしないのはいいね。余計気に入った」
「……」
「別に、付き合っているのなら、仮に昨日のことが触れ回っても構わないだろう。あれより過激なことくらい皆やってる……いや、皆は言い過ぎたかな」