「焦ったよ。暇潰しにパラパラとめくっていたら、何故か全部落下なんてね」
立ち上がった間宮くんは、今度は逆にわたしたちを見下ろした。大輔より背が高いかもしれない、これは。こんなに近付いたのは初めてだったから新発見だ。
間宮くんは、わたしのクラスメイトで、クラス委員で生徒会長。高校から一緒の人だけど、どうやら小学校からずっとそんな感じだったらしい、仕事好きな人。百瀬の黒縁眼鏡とは違う、銀色フレームのインテリ眼鏡をかけていて、それが背丈と相まってずいぶん年上に感じてしまう。
「もう帰るところかい?」
「そうだね。間宮は?」
「もうしばらくしたら帰るよ」
「そうか。――みーちゃん、行こう」
「っ、あっ、うん」
「じゃあね、間宮」
「ああ」
去り際、肩に掛けた鞄がわたしの意思とは別にその場に留まった。何だろうと振り返ると、間宮くんが引っ張っていて。
「――日紫喜さんも、バイバイ」
挨拶と同時に鞄は解放される。
「うん。また明日」
同じクラスだけど、間宮くんと話すのは初めてだった。