あまり考えないほうがいいと、何処かから警鐘が鳴り、話題を変えることにした。
「百瀬って、本ばかり読んでるんだから、もういっそ文芸部に入ればいいのに。あと半年と少しは活動できるよ?」
「ウチの文芸部は書く人ばかりだから僕は無理だ」
「違うの?」
「大違い。もしかしたらみーちゃんのほうが適してるかもね」
「わたしが?」
察しの悪いわたしを怒るでもなく、少しだけ首を傾げて目を細めて苦笑したあと、百瀬が言う。それはね、と。
「だって、僕のほうが繊細だけど、みーちゃんのほうがロマンチックだからさ」
「……悪かったわね。ガサツで」
「ガサツではないけど、おっちょこちょいだよね。軽率っていうか。――ねえ、みーちゃん。上履き仕舞い忘れてるよ」
「……」
そんなの知っていましたよという素振りで上履きを仕舞いながら百瀬を睨むと、もう背中しか見えなくなっていて。慌てて追い掛けてしまう。
昇降口を出て顎を思い切り反らして見上げると、もう夕焼けは半分終わりかけていた。