「ねえ、みのり。私だけ朝の現場を見てないんだけど。もうっ、日直がなんで今日なのよ」
そんなこと言って拗ねられても……柔らかい頬っぺたをこれみよがしに膨らませる小夜のそれを突いて破裂させた。
「凄かったぞ。じいさん振り切り走ってくるみのりの形相。な? 幹二」
「うん。日紫喜にも見せたかった。小一の時、自転車ごと深い側溝に落ちる瞬間以来のみーちゃんだった」
「そっか。幹二君が暑い中でみのりを待ってたくらいの、って想像しておく」
「……ちょっと。みんな笑うけど、怖かったの。いきなり、あんな……」
わたしだって平均的怖がりなんだから。それに、訳もわからず追いかけられれば誰だって逃げると思う。
「花を貰ってやればもうなんもないんじゃね?」
「じゃあ、大輔が代わりに……」
「それじゃあ終わんねえよ。みのりにしか向かってってなかっただろ」
また、部活の時と同じことを言われてしまう。
そんなこときっとない、意味なんて……思うのに、正解だと言い切る大輔に、わたしは口を閉じてしまった。
でも……
……もしそうだったとしても、いきなりあんな。好きな人ならともかく、と架空の相手で想像する。
とりあえずなんてことは無理だ。顔知ってるくらいの人から、花束なんて受け取れない。