最近、百瀬はこういう台詞を大放出してくるからどう対応していいのか。
逃げ出すことも出来ない立ち尽くす私に、百瀬がおいでと手招きする。わたしはそれに吸い寄せられるようにふらふらと近付いていく。
「――、いい?」
誰もここには居ないのに、わたしにしか届かない声で囁き、俯き頷く。顔なんて見られたくないとか、なんてズルい……。
最近知ったこと。百瀬の体温は、わたしより高い。知った訳はこういうことが始まったから。
ふわりと、百瀬の腕がわたしを囲い、百瀬の首筋にわたしの顔が埋まる。感じたのは、百瀬の背丈が最近伸びたということ。それを始まってたこの距離で感じた。
わたしは、百瀬に抱きしめられてる。
高い体温がもう少し上昇すると、もうどうしていいか分からなくなる。こっちの沸点はとうに突き抜けている。
近いところで漏れる呼吸が耳にかかってくすぐったい。
「っ」
「――帰ろっか。もう暗くなる」
思わず身をよじってしまうと、やがて、身体は離れていく。
「……、うん」
外の景色を見ながら、百瀬はずれた眼鏡を関節のごつごつしている長い人差し指で直していた。