わたしたち以外、もう誰もいない図書室。そこは世界から隔離されたように、地球の音さえも今はしない。


わたしの床を踏む音と、百瀬がかたりと本棚に手をかける音。


百瀬は一番奥の本棚に手をかけていたけど、私の足音に気づくとこちらに身体全部を向けて。


――また、優しく笑う。


「……ごめんなさい」


もっともっと、言わなきゃいけないことはあるのに。


百瀬はいつも、わたしに沢山くれるのに。


「――その謝罪は、僕は振られたってこと?」


秋の夕焼けはどの季節よりも綺麗で最高に赤くて、寂しげ。その景色を背負い、窓ガラスにもたれかかりながら、百瀬は少し傷んだら顔をして訊ねてきた。


「ちがっ!! それは違うよっ。わたしが……っ」


「だったら謝る必要ないよ。ホントみーちゃん、は可愛いね」


「そんなわけないでしょっ。こんないい加減な……宙ぶらりんさせてるのに……」


「そんなみーちゃんが可愛いんだよ。あんまりすぎて僕は困ってしまうくらいだ」


「っ!!」