百瀬は決してわたしを急かしてはこない。けど、こうした言葉の中に、誘惑めいたものを秘めるようになったと思う。以前からだったかなんて、恥ずかしくて訊けない。
「……? いやまて。全く、秘めてなんかないような気も……」
「何か言った? みーちゃん」
「……百瀬のバカ、って言ったの」
「うん。そうかもね。恋は盲目なんだから」
「っ!? ……」
わたしは毎日、百瀬のことを考える。もちろん他のことだって考える。他の人たちよりもそれをしてこなかったわたしは、自業自得だけどとても大変だ。
やっぱり、この世界は恋愛だけに生きるなんて無理な話。
うん。でも――
――だからみんな、物語に夢を見る。
洋助さんが大切にしていた、今は百瀬がそうしている物語に思いを馳せる。
「みーちゃん?」
「えっ?……なんでもないから」
見つめられると動けなくなることが、最近あることがわかった。力む自分も自覚した。他にも色々。
あとは何が足りない?
頭を抱えるわたしを見て、隣の百瀬は甘く微笑んでばかり――そんな、日々。
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