「……百瀬にこうやってされるの、嫌じゃない。誰にでも抵抗なくなんて、多分わたしには無理」


「うん。そうだと思ってる」


「でも、百瀬だから、ちゃんと確信持ちたいの。大切だよ。中途半端でどうにかなっちゃって、いつか今生の別れみたいなことにはなりたくない人なの」


抱きしめられると心がほぐれる。さっきとは違う涙だって溢れそうになる。


けど、わたしのものにするなら、もっと何かが必要な気がする。


「百瀬には嘘なんてつきたくない。けど、これは甘え?」


訊いてしまうのは、多分卑怯なことだ。でも、百瀬はそれでいいと言ってくれたから。


死にもの狂いで、百瀬とのこと考えるから。だから。


近い距離は恥ずかしかったけど、腕の中から見上げてみた。こんなわたしが、本当にいいのかと問う。表情で訊いただけなのに、愚問だとでも言うように頭をくしゃりと撫でられた。


「ほんとは、少し怖いんだ。うん――でも、ちゃんとわかっていって。僕はずっと、みーちゃんに伝え続けていくから」


「――はい」


「時々……こうやって、みーちゃんに近づいてしまうかもしれない。嫌だったら殴って。自分ではコントロール不可能だから」


「は、い……」


「本当はいつでもこういうことしていたいんだけど、それは実は秘密なんだ」


「……バカ、ひとつも秘めてないじゃない」


抱きしめられたままの体勢は、宣言通り、百瀬から解放されることはなく。けど、わたしからも、密かに離れ難かった。


そんな都合のいいこと、今のわたしに言えるはずはないから、ただただ百瀬に抱きしめられていた。


ああ、本当に。こんな百瀬には、とことん向き合わないとばちがあたる。