話をぼうっと聞くわたしの唇にミルク味の飴が押しつけられる。百瀬の指が飴を押し続け、唇の次に歯にあたる。さほど抵抗なく看破されれば、やがて口内に甘い味が広がる。


落ち着くだろう? そう言って、百瀬も同じ飴を頬張った。


「奥さんとよく似ているねって、顔をほころばせてた。きっと、って、洋助さんは覚えていない時の自分を考えてた。――あまりにも幸せなカタチが目の前に現れてしまったものだから、少しふわふわしてしまったんだろうって。ずっと眺めていられれば、それはとても幸せだったろうけどそうもいかなくなって。そしたら、気持ちが溢れて溢れて、最期に間に合わなかった花束をどうしても贈りたくなってしまったのかなって」


「っ……」


「怖がるのは当然だって、申し訳なさそうに言ってた。僕にね、逃げてくれていい、守ってやってくれってお願いしてくれた。僕はそうさせてもらうことにした。みーちゃん、全部知らせちゃってごめんね。みーちゃんをどこまでも優先させたかったけど、知って欲しいって思ってしまった。罪悪感からかな」


「……罪悪感?」


「そう」


みんながそうだと、百瀬は言う。みんなみんな、後悔ばかり。


「みーちゃん。後悔なんてみんなしてるんだ。間違えないようにと頑張っても、そうはできないんだ。みーちゃんだけじゃないよ。だからこんな気持ちになるのはいけないなんて思うことない」


「でも……」


「それに、結果オーライだ。洋助さんは今日、みーちゃんに花束を贈ることが出来た。幸せそうだった。悲しいことなんて、そこにはなかった」


本当に、わたしはそんなふうに思っていいの?