「……花束、受け取らないって、わたしは、決めたの。だから、わたしは後悔、したり……っ、なんかしちゃいけないのにっ」
「なんで?」
「怖いから、わたしは逃げた。なのにっ、理由知って、悲しむなんてずるいの。贅沢なの。理由を知って、洋助さんのご病気のことも百瀬から知って……やっぱり、受け取ればよかったなんてわがまま。そんなふうに思うなら、始めから……」
始めから、全てに向き合えばよかったんだ。
ごめんなさい。
逃げなければよかった。
花束、受け取ればよかった。
知ろうとすればよかった。
辛い思い、わたしのせいで……。
こんなふうに思ってしまって、ごめんなさい。
「洋助さんに……百瀬にも、悲しい思いをさせた。余計な荷物を背負わせたの、わたしは。……わたしがいたから……」
「違うよ」
諭される声さえわたしには勿体ないと思った。
「誰かさえいなかったらとか、そんな極論はちょっと最低。僕はみーちゃんがいなかったらなんて恐ろしいこと、想像でもしたくない」
「っ、ごめんなさい……」
なのに、どこまでも自分に甘いわたしは、その優しい声に癒しを感じてしまう。
「洋助さん、自分がみーちゃんにしてること知ってたよ。覚えがなくても、人の口があるからいつかは耳に入るものなんだって。夢だと思っていた出来事が、現実自分がしてることだって知って混乱してたみたい。申し訳ないって」