――……


辿り着いたのは、百瀬の家の玄関だった。


「みーちゃんの家、おばさんもういるみたいだから」


「っ、部屋に駆け込めば……大丈夫だから。バレない」


「嫌だ」


真っ暗な百瀬の家の中に引き込まれる。そして、引っ張られたまま強引に階段を上がっていく。二階の突き当たりは百瀬の自室だ。


部屋の灯りをつけた百瀬が、わたしをいつものクッションに座らせてくれて。


何も言わず、ただただずっと、わたしの気持ちが追いつき落ち着くのを待っていてくれた。









「……ごっ、めんっ、なさい」


しばらく時間はもらったけど、完全になど待っていてもらったら夜が明けてしまう。それでもきっと足りない。だから、謝罪だけをなんとか絞り出す。


「何がだよ。ここなら気兼ねしなくてもいいし、邪魔なら僕も出てるから」


色んな水分が混じったわたしの顔や手の甲を、百瀬は柔らかなティッシュで嫌がる素振りひとつせず拭ってくれる。やがてティッシュの箱をわたしに預けて部屋を出て行こうとしたから。


「やだっ!!」


わたしは咄嗟に、百瀬の腕を掴んで引き止めた。


「行っちゃ嫌っ! ……ぅぅっ……ちが……っ」


わたしは悲しくて泣いたんじゃない。慰めたり、落ち着かそうとなんかしないでいい。


「百瀬にっ……洋助さんに、ごめんなさいっ」


「――どうして?」


そう問うて、百瀬が腰をもう一度下ろしてくれた。そしてわたしを待ってくれる。遅くて遅くて、きっと呆れているだろうけれど。