救出劇はあっけなく終了した。


洋助さんのご家族が車で総出で駆けつけてくれて、わたしは多少の道具と人力で地上へ復活となった。


穴から出る際に、散らばった花たちを集めて束に直した。それを胸元で抱えて出たわたしの姿に、車内で座っていた洋助さんは破顔していた。ついさっきにも見たようなと感じた既視感は、隣にいる百瀬のそれととてもよく似ていたからだと思い至る。


これまでのことを含め、わたしたちは洋助さんご家族からもの凄く謝れてしまう。どうやら、穴に落ちたことまでが、あちらでは洋助さんのせいだと思っているみたいで。


慌てて誤解を訂正しようとしたら百瀬がそれを制する。そして、無言で促された視線の先では、洋助さんもそうしろと言っているような目をしていた。


「いいんだよ」


その時点で行える精一杯の方法だったのかもしれないけど、もっと最善策を見つけられなかったのはお互いさまだと諭される。否定もしたい。でも、もうこの場を過ごせる気力は残っていなくて、わたしは、明日引っ越すのだという洋助さんに別れを告げた。


車へと向かう。百瀬に隣に立っていてもらい、今までの非礼と、最後に、キレイなキレイな花束のお礼を。


送っていくと申し出てくれた洋助さんご家族のご厚意をお断りして、わたしは百瀬とふたりきりで帰路についた。




これで、もう本当に、お別れ。